前回の記事では、創業融資審査で「下準備」することについての重要性をご理解頂けたかと思います。
ではこれから具体的にどのような下準備をしていけばよいのでしょうか?
今回の記事から3つにポイントを分けて下準備について解説したいと思います!まずは「創業計画書」です。
創業計画書1枚であなたの事業がすべてわかってしまう
創業計画書とは、日本公庫の「新創業融資制度」に申し込みをするとき、申込書と一緒に提出する審査書類のことです。
用紙のサイズはA3サイズで、様式も決まっていて、すべて書き込むことによって、事業の概要をだいたい説明できるようになっています。
これは日本公庫に相談に行ったときにもらえますし、公庫のホームページからもダウンロードできますので、まだ見たことがないという人はぜひ入手して中身を確認しておいてください。
ただこれを見た感じかなり簡素で、本当にこの用紙だけでちゃんと審査が行われるのかという一抹の不安もありますが、実際この用紙の記載内容を元に審査は行われます。
というのも、この新創業融資制度にはたくさんの創業希望者が申し込みをしており、融資担当者も一人で数十件の案件を抱えているため、このように用紙1枚で事業内容を確認できるようにしてあるのですね。
しかし逆に言えば、この紙切れ1枚であなたの事業の将来が決定されるかもしれないのですから、けっして甘く見てはいけません。それだけとても大事な資料だと言えます。
では融資担当者は、この創業計画書から何を読み取ろうとして、何を一番知りたいと思っているのでしょうか?
担当者が創業計画書で本当に知りたいと思っている情報とは?
まず、公庫の担当者にすれば、
- 「あなたのやろうとしている事業は継続して売上を出せるのか」
- 「数か月後には売上げを伸ばして安定した利益を残せるのか」
- 「その利益の中から毎月ちゃんと借入金の返済原資を作れて、貸したお金を返してもらえるのか」
といったあなたの事業で「貸したお金をちゃんと返してもらえるのか」という現実的なことが一番知りたいのです。
したがって、公庫の担当者が求めている上記のような情報がほとんど記載されていないとすれば、当然印象には残りません。
いくら中身をびっしり書いてあっても、そのような要素のない資料であれば、担当者の求めている資料ではないためその結果、
「審査に通りにくくなる」
ということは知っておいてください。
つまり、公庫側が求めている「真の意図」を読み取ったうえで資料を作ることが創業融資審査ではとくに大事だといえますね。
創業計画書を書くときのポイントとは?
では実際に、創業計画書を書くときは、どのようなポイントを守って書けばいいのでしょうか?
具体的には次のようなポイントに注意して書くようにすればいいかと思います。
空欄は絶対に作らない
自分の事業を説明するときに、書くことがないからといって空欄のままにしておくのは絶対にNGです。
創業計画書に空欄があると、担当者のあなたに対する印象が悪くなってしまいます。あなたの事業に対する姿勢をこういうところからもチェックしているわけです。
書くことがなければ、とりあえず自分で考えて何とか空欄を埋める努力だけはしてください。
「ひな型」と同じように書かない
公庫のホームページやパンフレットを見ると、ご丁寧にどのような記載をすればいいかという「ひな型」が用意されています。
そのため、実際にこのひな形の記入例を元に中身を書いてくる方が結構いらっしゃいます(公庫の方から実際に聞きました。)
もちろん記入例を確認するだけならいいのですが、自分の事業について中身をひな型と同じように書いても、自分の事業の中身を担当者に伝えることはできませんし、そのまま書いても意味がない
というのはわかると思います。
だから記入例はあくまで参考程度にして、まずは自分の言葉で自分の事業についてしっかりと書くことが大事です。
専門用語は使わず分かりやすく伝える
融資担当者は、すべての事業について精通しているわけではありません。
したがって、もし自分がこれからやる予定の事業において「専門用語」があるときはできるだけ使わずに、分かりやすくして説明してあげる必要があります。
しいていうなら、中高生に分かりやすく事業内容を説明してあげるような感じで、担当者に教えるようにしておけばいいかと思います。
夢や希望ばかりを書かない
あなたの事業における「夢や希望」など、自分のことばかりを創業計画書に書いてもあまり意味がありません。
書くことは否定しませんが、文字数は限られていますし、そこであまり自分の夢や希望ばかり書いても「絵に描いた餅」でしかならないので、夢や希望を書くのはほどほどにしてください。
もしどうしても熱意を担当者に伝えたいのであれば、別紙に書いて創業計画書とは別にして提出するようにしましょう。
ではどのような要素がある創業計画書は担当者に響くのか?
逆に、公庫側がこれはいいと思えるような創業計画書とはどういうものでしょうか?
それはズバリ、
「マーケティング」
の要素が入っている計画書です。
マーケティングとは、「お客様に自分の商品やサービスを買ってもらえるように仕向けるための施策」とでもいえるかと思います。
具体的には、
「あなたの事業における市場には需要(ニーズ)はあるのか」
「あなたの事業のポジションは、同業他社とかぶっていないか」
「あなたの事業のターゲットとなるお客様像は絞りきれているか」
「あなたの事業のターゲットには、どういった付加価値を与えられるのか」
「あなたの事業のターゲットに対しては、どのような広告宣伝をして集客するのか」
などといった要素が記載されていれば、融資の担当者にしてみれば具体的な事業計画がある方があなたの事業をよりイメージしやすいため、結果として、
「審査しやすい案件=審査に通りやすい案件」
だと判断してもらえると思います。
創業計画書ではすべてを書ききれない場合はどうすればいいか?
創業計画書にはマーケティングの要素を盛り込んで書くのがいいというのはわかりました。
ただ創業計画書では、A3用紙の限られたスペースにこのような要素をすべて書き込むことは正直むずかしいと思います。
そこで、やはり創業計画書とは別に、自分で
「事業計画書」
を独自に作っておくことを強くおすすめします。
事業計画書とは、創業計画書を補完するという意味合いで、A4用紙2、3枚程度にまとめた資料のことをいいます。
このような追加資料は本来用意しなくてもいいのですが、一緒に提出しても問題はありませんので、なるべく自分で作成して用意しておいた方がいいと思います。
まとめ
こういった感じで創業計画書や事業計画書を作るのは、正直時間も手間もかかります。
しかしこうすることによって、
「自分の事業はこれだけマーケティング戦略も考えてあるので、お金を貸すだけの価値はあると思います。だからお金を貸してください!」
ということを担当者に強力にアピールすることができて、結果お金を借りることができれば、事業計画書を独自に作成する意義は十分あると思います。
結局こういったひと手間ができるかどうかで、担当者の印象が大きく変わってくるのであれば、やっておいて損はないと思います。