創業融資における「公庫融資」では、多額の資金を必要とするベンチャー企業は「資本制ローン」を活用しよう!

創業融資をする

こんにちは行政書士で創業支援アドバイザーのセイケです。

さて前回は創業融資における日本政策金融公庫の「新創業融資制度」 (以下「公庫融資」)において、女性や若者、シニア世代の起業家を手厚くサポートする融資制度があることについてお話ししました。

今回は、ベンチャー企業を立ち上げようとしている起業家にとって最適な融資制度があることについてお話ししたいと思います。

今の時代はいろんな場面でベンチャー企業が注目されていますね。

これからは既存の起業だけでなく、柔軟な発想を持ち、なおかつスピード感をもって活動する新規のベンチャーの存在というのは社会を活性化させるうえで不可欠な存在となっています。

こうしたベンチャーを立ち上げて事業活動をしていこうと思ったときまずはお金の問題が出てくるかと思います。

とくにベンチャーの場合、設備資金をはじめとする多額の開業資金を必要とする事業を行うことが多く、その場合自己資金だけではむずかしいというのが現状だと思います

そんな新規性があって、多額の事業資金を必要とするベンチャーを立ち上げるときにぜひ活用してほしい融資制度があります。

それは日本公庫の「資本制ローン」です。

ではどういった点でこの資本制ローンがベンチャーの起業において最適なのかを見ていきたいと思います。

資本制ローンのほかとは違う特徴とは?

まずこの資本制ローンですが、正確な名称は「挑戦支援資本強化特例制度」という長いものですが、一般的にはこの資本制ローンという名称がよく使われているようです。

そして本制度の特徴としては、大きく次のようなものがあります。

(1)無担保・無保証人であること。

(2)融資限度額は4000万円。

(3)返済期間は5年1カ月以上15年以内の期限一括返済。

この中でも特徴的なのは(3)の期限一括返済というところだと思いますが、金利については毎月返済となっています。これにより毎月の資金繰りはだいぶ楽になるということがいえるかと思います。

そしてこの資本制ローンの最大の特徴が、

(4)資本制ローンによる借入金は、金融検査上自己資本とみなすことができる。

という点です。

つまり本来ならば金融機関からの借入金というのは長期、短期にかかわらず貸借対照表における「負債」という位置づけとなります。

これが資本制ローンの場合だと「自己資金」つまり貸借対照表における「資本」に組み入れることができるということです。

これは多額の事業資金を要するベンチャーにとって大きなメリットといえます。でもこれがどうしてメリットなのかという疑問をお持ちになられた方もおられると思います。

専門的な話になりますが、この資本制ローンの借入金分を「負債」から「資本」に回すことができることによって、貸借対照表における自己資本比率を上げることができます

これによって他の金融機関からの借り入れを申し込むとき、融資の審査に際して財務体質が良好であるという判定をもらえる確率が高くなる可能性が出てくるため、結果他の金融機関からの融資も受けやすくなるということがいえるかと思います。

以上のことから、この資本制ローンは、単に創業時に多額の事業資金を必要とするベンチャーが安定した資金の確保ができるだけでなく「財務体質を強化できる」という一面もあるといえるのです。

資本制ローンのさらなるメリットとは?

さらにこの資本制ローンのメリットとしては、

(5)「劣後特約」があること。

という点も見逃せません。

これはこの資本制ローンで借り入れしたお金については、融資の償還順位がほかのすべての銀行の融資に劣後するというものです。

分かりにくいかと思いますが、もしかりに自分の事業が法的倒産手続の開始決定が裁判所によってなされた場合、会社の資産は本来債権者である金融機関に対して債権の順位にしたがって分配されることになりますが、この資本制ローンの借入金については「一番後の順位」になることで、ほかの金融機関に優先的に分配されます。こうした特徴を「劣後特約」といいます。

つまりこの劣後特約があることによって、民間金融機関からすれば、もし何らかの事情で会社が倒産した場合でも自分が貸したお金を優先的に回収できるので、回収できなくなる心配は少なくなる、だから民間も事業資金を貸しやすくなるということがいえるのです。

こうした特徴が資本制ローンには存在することで、創業や新規事業に際して必要となる資金を安定して確保できて、同時に財務体質も強化できるということでベンチャーにとってはとても頼もしい存在だといえるのですね。

資本制ローンのデメリットとは?

しかしこのようにメリットが多い資本制ローンですが、もちろんデメリットもあります。それは次のようなものです。

(1)業績に応じて一年ごとに金利が設定されるため、業績な好調なときは、業績が低調なときに比べて、金利負担が大きくなる。

(2)契約後の期限前返済は、原則できない。

とくに(2)の場合は要注意です。なぜならこの資本制ローンは「期限一括返済」というものであるため、期限がくれば一括で返済しなくてはなりません。

したがって、事業が好調なときに期限前返済をしようと思ってもできないので、返済期限までの間にしっかりと財務基盤を整えておくことで一括返済に備えるという対策がとても重要になってきます

資本制ローンを申し込む際の条件とは?

このようにベンチャーにとっていいことづくめの資本制ローンですが、じゃあこの資本制ローンはベンチャー起業家であれば誰でも申し込めるのでしょうか?

しかしそういうわけではありません。この資本制ローンの利用についてはちゃんと条件が示されています。

まず大前提として、次のいずれの要件も満たす方というものがあります。

(1)地域経済の活性化にかかる事業を行うこと。

(2)税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。

さらに自分がどのような融資制度に申し込むのかによっていろんな条件が指定されています

たとえば「女性、若者/シニア起業家支援資金」の場合 「技術・ノウハウ等に新規性がみられる方」にかかる資金に限るというように、かなり細かく条件が指定されているので、詳しくは日本公庫のHPにてお確かめください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?かなりややこしいと思われた方も多いと思いますが、多額の事業資金を必要とするベンチャー起業家にとってはありがたい制度といえるかもしれません。

いずれにしてもこうした資本制ローンがあることで、財務が安定し、結果事業が円滑に行われるようになるといったメリットもあるわけですから、該当される方はぜひ検討してみてもいいかもしれませんね。

もちろんこの資本制ローンについても融資審査はきちんと行われますので、事前に条件などを確認してしっかり準備をしたうえで申し込んでほしいと思います。

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