創業融資審査をうまくパスするための 具体的な「下準備」のやり方(2)~事業計画書編~

創業融資をする

創業融資の審査をパスするための下準備のやり方についてお送りしていますが、2回目は「事業計画書」についてです。

前回の記事では、創業融資審査での「下準備」のうち「創業計画書の書き方」が大事だということをお話ししました。

そして、創業計画書では説明して足りない部分については、自分で「事業計画書」を作成して補足資料として提出するという「ひと手間」をかけることが、融資審査をパスするためには必要不可欠であることもお伝えしました。

では創業融資を申し込むときに作るべき「事業計画書」とは、いったいどのようなものであればいいのでしょうか?

「創業計画書」と「事業計画書」の違いとは

まず事業計画書の話をする前に、そもそも「創業計画書」と「事業計画書」の違いとは何でしょうか?これらは名前こそ似ていますが、中身は全く異なります。

創業計画書は、日本政策金融公庫の新創業融資を受けようとするときにかならず提出する資料で、これについては決まったフォーマットが用意されており、これを元に審査が進められます。

一方、事業計画書とは、その名の通り事業計画を書き記した書面のことで、よく上記の創業計画書の補足をするときなどに作成されます。これに関しては提出は任意ですので、特に決まったフォーマットは用意されていません。

そのため事業計画書は審査をするときにあってもなくても特に問題がありません。あくまで大事なのは「創業計画書」の方であり、事業計画書は創業計画書の補足的な意味合いのものという見方もできます。でも事業内容によっては、この事業計画書についても用意しておいた方がいい場合もあります。それはどうしてでしょうか?

自分で事業計画書を用意するメリットは?

では、この事業計画書を書いて用意しておくことにはどういったメリットがあるのでしょうか?

先ほども申し上げたように、そもそも日本公庫の新創業融資制度に申し込むうえで、この事業計画書というのは必ずしも提出しなければならないという書類ではありません。でもやはりわたしはこの事業計画書を作成して一緒に提出する方がいい場合もあると考えます。

それは次のような理由からです。

事業内容や専門用語をわかりやすく説明するため

創業融資の担当者は、いろんな職業の方を審査してきたので、だいたいの事業については理解できますが、なかには簡単に説明することがむずかしいという場合もあります。

その際、事業計画書を用意して、用語や事業についての簡単な説明などを記した紙を用意しておけば、担当者も事業のことをより詳しく知ることができます。

自分の事業の全体像を客観的に見ることができる

自分で作った事業というのは、自分ではいいと思っていたとしても第三者から見ればどうしても「独りよがり」な計画になりがちです。

そうしたものにならないために、頭で思っていることを紙に書き起こすことで、一度頭の中にあるアイデアを整理して、客観的に事業を見直すことでより精度の高い事業計画書が完成します。

自分の事業の実現可能性を論理的にプレゼンすることができる

創業融資に限らず、金融機関、株主、支援者などから資金調達をしたいと考える際にも、自分の事業を論理的にプレゼンできればうまくいく可能性が高まるように思います。

論理的とは「AがBだからCである」といった感じです。 原因から結果まで一貫性を持って説明ができれば、事業計画書にも「説得力」が生まれます。

創業融資を受けるために事業計画書に書くべきこととは?

担当者がお金を貸してもいいと思える事業計画書とはズバリ、

マーケティング

の要素が盛り込んであるかどうかだといっていいと思います。

なぜなら、お金を儲けないことには将来貸したお金も帰ってこないわけですから、担当者はどのようにしてこの事業でお金を儲けるのかは一番知りたいところだと思います。

そこで必要になるのが「マーケティング」の視点だということです。

「マーケティング」とは何なのか

マーケティングという言葉はよく耳にはしますが、あまりその内容については説明できないという方も多いかと思います。

マーケティングとは、簡単に言うと「自分の存在(取り扱う商品やサービス)をどのようにしてお客様に認知させるのか」という一連の行動のことです。

たとえばあなたがお店を持って、そこで「洋服を売る」商売を始めたとします。

今あなたは「〇×洋服店」という看板しかお店に出していない状態です。しかしこのままではお客さんは中に入ろうとはしてくれません。

なぜならこのお店はどんな洋服を売っていて、どのような年齢層の人に訴求していて、どのような価格帯なのか、といったことがお店の外からはさっぱりわからないからです。

若者向けの洋服ならば明るい雰囲気のお店にするとか、所得層の高いミドルエイジの奥様向けであれば、シックな感じの雰囲気の店内にする必要があります。

そこでお客さんをお店に招き入れるためにいろんな施策を取る必要があるのです。

そのうえで「商品の品ぞろえ」「商品の価格帯」「商品の販促(ポスター、のぼり、POP)」「お店の内装(色合い、インテリア、音響、照明、陳列方法)」「販売方法(現金、カード払い)」「広告宣伝(折込チラシ、ネット広告)」などを考えて、お客様に提示することでようやくあなたのお店の存在をお客様に認知してもらえるようになります。

なぜこんなことをしなければいけないのか

今の時代はモノがあふれていて、ふつうにモノを売ったり、ふつうにお店を出したりするだけではモノは売れないからです

そこで、戦略的にモノやサービスを売るために

マーケティング戦略

がこれから商売をするうえで必要不可欠になってくるのです。

融資担当者としても、あなたにお金を貸す以上はしっかりと売上を出してその中から貸したお金を毎月返済してもらわないといけません。そのためどのようにして売り上げを出すのかはとても気になるところです。

そこで事業計画書では、マーケティングの基本原則に基づいて自分の事業がこれからどのように運営されていくのかを書くことがとくに大事になってくると思います。

まず知っておくべき「商売の基本原則」とは?

あなたが創業融資を引き出す事業計画書をつくるためには、まず「商売の基本原則」を知っておく必要があります。

それは簡単に言うと、お客様に自分の事業を通じて「価値」を提供してお客様に喜んでいただき、その対価としてお客様からお金をいただくことなのです。

つまりお客様に対してなんらかの「価値」を提供できなければ、商売というのは成り立ちません。これが商売の基本原則です。

価値を提供することなくただモノを売ろうとしてもなかなかモノは売れません。価値を感じられないものを売ってもお客様からは感謝されませんので、結果的に何の対価も支払われない、つまり儲からないのです。

無理にモノを売ろうとするとただの「押し売り」になってしまう場合があります。だから自分の提供できる価値とは何なのかをまず知っておく必要があります。

ではその「価値」とはどういったものをいうのでしょうか?

「商品そのもの」ではなくて、目には見えない「価値」を売ることが大事

私たちはモノやサービスを買うとき、何も考えずにモノを買うことは少ないと思います。その商品を買うにあたって必ず何かその商品の裏にある「価値」を求めて買っているはずです。

たとえばディズニーランドだと「楽しさ・夢・ファンタジー」などといった言葉で表されるような「目に見えない価値」を提供することで、その対価としてお客様からお金をいただいていることがわかります。

実際彼らが売っているのは「入場チケット」ですが、その後ろにある楽しさや夢・ファンタジーといった「目に見えない価値」に対して、あれだけ多くの人たちがお金を払っているのです。

あるいはスターバックス・コーヒーの場合、多くの人は「コーヒー」を求めてお店には来ていません。お客様が求めているのは「居心地のいい空間」なのです。

このようにあなたが手にしているモノやよく利用しているサービスは、何らかの価値があるからこそ買っているのです。 私たちが実際に売るのはモノやサービスですが、これに付随する「目に見えない価値」がなければモノは売れません。

その価値を見つけ出して、お客様に訴求することがマーケティングではとくに大事なのです。それを事業計画書に盛り込んでいけばさらに精度の高い事業計画と思われますので、結果、創業融資審査も通りやすくなるといえます。

まとめ

事業計画書ではいかに自分の事業がしっかりマーケティング戦略を持っているかが成功のカギとなります。

この事業計画書の様式については、公庫ではとくに指定はありませんが、だいたい2,3ページでまとめるようにしてください。